●こうの史代「この世界の片隅に(下)」
読みたくなかったけど、買いました。
この漫画は、昭和初期、広島に生まれた「すず」という少女が大人になって嫁に行き、
日本が戦争に突入していく中、周りの人たちとの絆を深めながら成長していく漫画です。
作者が「夕凪の街 桜の国」を描いたこうの史代、そもそもが生活描写が得意な人なので
戦前の生活が細かく、ユーモラスに描写され、すずの天然っぷりもあってほのぼのと
した雰囲気と戦争の色が濃くなっていく緊迫感が同居した作品になってます。
読みたくなかったのは何故かというと、上巻、中巻での主人公、すずとその家族たちの
生活があまりに幸せそうだったから。
もちろん戦時下で貧しくはあるけども、そのなかのいろいろなことを乗り越えたうえで
繋いだ絆。この絆がいつまでも続いてほしい、と心から思える。
そこまでの過程を繊細に、淡々と描いてきた漫画だからこそ面白いし、魅力的だし
何度も読み返せる作品になっているわけで。
でも、我々は日本が負け、広島に原爆が落ちるということを知っている。そうなると
すずたちの生活にどんな試練が訪れ、悲しみが襲うかは容易に想像できるわけです。
でもまあ、買って読んでしまうわけですが。
そして、あぁ、面白いなぁ。そして凄いなぁ、と改めて思いました。
空襲、原爆で周りの人が死に、敗戦、米軍への怒り、何よりすずに降りかかった絶望
的な出来事が本当に全てを呪わざるを得ないような事なんですが、そこから色々な
感情を吹き出しながらなんとか明日に向かって歩いていく、そのプロセスが圧倒的で
ねじ伏せられたような気持ちになりました。
幸せな日常をつくりだすまでのプロセスを丹念に描き、それを一気に壊すことで
戦争の不条理な暴力性を浮かび上がらせる。「夕凪の街 桜の国」よりさらに深く
なっていった作品だと思いました。
買ってよかった~。
面白かったです。必見!